gerahaのブログ

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「ワイルド・スワン」を読んだ

少し前の話になるが、「ワイルド・スワン」という小説を読んだので、そのことを書いてみようと思う。

 

ワイルド・スワン 上下巻合本版

ワイルド・スワン 上下巻合本版

 

 

清朝が終わり、軍閥割拠の時代から、中国共産党が支配する現在まで、 祖母、母親、娘の3代にわたる人生が描かれた小説だ。著者は「娘」にあたる人。自身の体験と、祖母、母親から伝え聞いた内容で構成された、実話に基づく小説になっている。著者その人は、現在中国から離れた国で暮らしている。

 

個人的に、この書籍の極めて重要な点は、中国国内で販売されていないことだと思っている。中国共産党にとって都合が悪く、隠しておきたい内容も含まれているのだろうと思う。まあ、その辺はひとまず、置いておこう。

 

僕にとって最も心に残った人物は、著者の父親である「張守愚」だ。

(「共産主義」自体に悪い印象を持つ人も多いかもしれないが)僕から見た「張守愚」は、純粋な心を持った共産主義者だ。正義感が強く、立場の弱い労働者や農民と苦楽を共にし、自身が高官になっても正直であり続け、身内びいきをしない。清廉潔白を絵にかいたような人だと思った。

 

一方で、中華人民共和国の建国の立役者である「毛沢東」は、自身の立身出世のために「共産主義」の看板をうまく利用した人物のように読めた。

 

建国後、影響力が衰えはじめた毛沢東は、「文化大革命」を提唱し、自身の政的ライバルに「走資派(資本主義の犬)」というレッテルを貼りつけ、民衆の批判の的になるように仕向けて蹴落とした。毛沢東自身のお墨付きのもと、「文化大革命」の動きは中国共産党の幹部だけでなく、広く一般の民衆にも伝わっていった。一般民衆も、気に入らない知識人を敵視し、「走資派」とみなして迫害をし始めた。

 

中国国民の大きな分断と、社会の疲弊を招いた「文化大革命」に疑問を抱いた張守愚は、あるとき決心して、毛沢東その人に政策を改めるように手紙を書いて送った。しかし、それが原因で、当局から「走資派」とみなされ迫害を受けるようになった。迫害されても、彼は最期まで、自身の考えを曲げることは無かった。

 

度重なる迫害が心身を蝕み、張守愚は50代の若さでこの世を去った。

実に惜しい人物が、若くして亡くなったものだと思う。彼には高潔さがあり、公平で、人徳があったため、少なくない人たちから慕われていた。

 

張守愚の話のほかにも、読み応えのある内容はたくさんある。ただ、僕にとっては、この小説は張守愚との出会いであった。迫害のリスクを負っても理想に生きる彼のようには、僕はとても生きられまい。ただ、心を彼に寄せることはできる。彼のような、正直で誠実な人が、政治のリーダーになって欲しいと思うことはできる。